住宅購入=新築が当たり前だった時代とは違い、今住宅購入をご検討の方は、購入した家に一生住み続けるのではなく、必要に応じて売却することを想定される方が多いです。
しかし以前に比べると中古住宅流通が活性化されているとは言え、住宅購入にあたっての考え方や常識などはまだまだかつての新築偏重時代を引きずっているものも多く、いずれ売却することを希望しつつも、将来売れそうにない家を購入してしまう、残念な買い方をする方が少なくありません。
今回はどのような家が将来売ることができる家なのかについてご説明します。
■将来売りたくなった頃は今よりずっと厳しい状況であると認識する
まず前提として、これから家を購入する方が、家を売ろうとするタイミング(イメージが付きにくいので15年~20年後と想定してください)は、家を売る方にとって今よりかなり厳しい状況に陥ることが予想されます。
理由は人口減少です。
日本は人口減少局面に差し掛かっており、加えて極端な少子高齢社会でもあり、一次取得者層と呼ばれる35歳±5歳の人口は減り続けることが確定しています。
仮に今この瞬間に第3次ベビーブームが発生して爆発的に出生数が伸びたとしても、ある程度の年齢にならないと家を買う訳ではないので、これから家を購入する方が家を売ろうとするタイミングには間に合いません。
人口問題をテーマにした時に移民を受け入れるという話題が注目されますが、日本は島国なので、諸外国と違って移民を受け入れる文化や土壌がなく、それこそ20年~30年程度のスパンで解決できる問題ではありません。
以上のことからこれから家を購入する方が、家を売ろうとするタイミングにおいては、今よりもずっと売却が難しくなると想定するのが現実的です。
こういった中長期スパンの話題になると、「将来のことはわからないから」と考えることを諦めてしまう人がいるのですが、人口は災害などで急激に減ることはあっても急激に増えることはないので、現時点での状況を精査すれば、将来の姿を予想することはそれほど難しいことではありません。
■重要なのは買う人がいるかどうか
売ることを考えると書くと、真っ先に「いくらで売れるか」を想定する方が多いです。
特に自宅の資産価値をそれほど気にしていない人ほど「どうせ売れても二束三文でしょ?」と言う意見になります。
これは間違いです。
買う人がいなければ値段が付きません。
かつては二束三文で買い叩かれるのが最悪の想定でしたが、今は売りたくても売れない、維持費や税金だけがかかり続ける「負動産化」するのが最悪の想定となります。
実際に売れるかどうかは売るに出してみないとわかりませんが、15年~20年経過しても変わらず若い世代が溢れ、購入希望者がたくさんいることが想定できるか、地域全体の高齢化が進んでますます過疎が進行してしまうのかは、今の状況を見ればある程度判断できます。
家を買う時には様々な価値観があります。
例えば実家が近い、子供の頃から住んでいて愛着がある、子供の学区域を変えたくない、職場に近いなど、お金に結びつかない価値観は「負動産」を避ける判断においては邪魔でしかありません。
住宅を購入した時点で、その地域が持つ問題点を抱える当事者になってしまいます。
若い世代が人口減少が進行する街から出て都会へ行くのは、若い世代が薄情なのではなく、都会を選ぶことの方が合理的だからです。
このお金に結びつかない価値観は、防災に関する判断でも邪魔になりますので、ドライな考え方と思われるかもしれませんが、重要な判断基準なのでご注意ください。
これから家を買う方は、どのような家をいくらで買うか、よりも先に、将来に渡って人口が維持できそうな街を選ぶことが大切です。
■人気のない物件を選ばない
分かりやすい指標をいくつご紹介します。
まずは現時点で人気のあるエリアであり、人気のある物件であることです。
今の段階で売るのに苦労している物件が、15年~20年経過して、行列ができる人気物件になるはずがありません。
現時点で取引量が少ないエリア(ポータルサイトの物件広告数が少ないエリア)、広告掲載開始から結構時間が経過しているのにまだ売れていない物件、自分以外に内見に行っていない物件などは人気がないエリアや物件の可能性があるので、注意したいところです。
不動産業界をテーマにしたドラマや小説で素行の悪い不動産会社が『この物件は他にも検討している人がいて、早く決めないと売れてしまいますよ』なんて購入希望者を煽るシーンが描かれたりしますが、他に検討している人がいるというのは重要な情報なので「どうせ営業トークだろう」と無視せず、しっかり状況を確認した方が良いです。
また、不動産会社から急かされるのは本意ではないと思いますが、人気エリアの人気物件は当然ながら他の購入希望者と競合します。
本当に気に入った物件が見つかった場合には早く決断しなければならないということも理解しておく必要があります。
■安全側の判断を
いくつかのエリアや物件を比較・検討する際には、どちらがより安全な選択か?という基準で検討することをお勧めします。
将来売ることができるか?のテーマでは、どちらが人口を維持しやすいか(あるいは人口減少のスピードが緩やかか)という判断基準になります。
エリアの検討について東京都で例を挙げると、23区外よりも23区内の方がより人が集まることが期待され、需要があるということは不動産価値も維持されやすいと期待できます。
一般に都市中心部へ向かうほど不動産価格が高くなりますので、価格を重視すると中心部から離れたエリアを選びがちですが、将来売れるかの判断では中心部に近い方、価格が高い方がより安全の判断となります。
エリアについはもう一点。最寄り駅までの徒歩分数も指標になります。
最寄り駅から徒歩20分の物件と徒歩10分の物件では、徒歩10分の物件の方が利便性が良く、検討してもらえる人が多いことが期待できます。
地方に行くと電車ではなく車社会だからといって、狭域立地の検討をせず、安易に郊外を選択しがちですが、車があれば大丈夫は危険な判断です。車がなければ著しく不便な立地となるからです。
傾向としては都市部よりも地方の方が人口減少が進行しています。
持続可能な自治体運営のために、全国規模で「人が住むエリア」と「そうでないエリア」の線引きが行われ、人が住むエリアへの資本の集中が行われようとしています。
車社会だから、は街の中心部よりも安い郊外のエリアを選択する言い訳にはできません。
自治体レベルで人口減少が懸念されるエリアを選ばなければならない場合は、よりシビアに人口減少にあっても良い立地にこだわる必要があります。
■家選びの前に街選びを
人口減少社会においては街選びが最も重要な検討事項です。
住宅を所有した時点でその街が抱える問題に巻き込まれることになるからです。
多くの方が家を買おうと思ったらインターネットの物件広告を探すところから始めます。
インターネットで気になる物件が見つかったら不動産会社へ問い合わせをして、物件を内見して、購入に至ります。
この流れだと重要なエリアについて十分に検討できない恐れがあります。
多くの不動産会社は地域密着で経営しているので、「我が街が一番」という前提で商売しているからです。
少しでも将来売ることを期待しているのならば、検討するエリアの人口動態や自治体の財政状況、現時点での不動産の取引量、ハザードマップなど物件探しの前にやることがたくさんあります。
これらの情報はインターネットで簡単に調べることができますが、複数のエリアを並べて比較しようとすると少し手間がかかります。
当社は「資産価値が落ちにくい住宅購入」を第一に提案する不動産会社です。
当然ながらこの記事に記載したような内容については皆さまに代わってお調べいたしますし、皆さまの状況に合わせた資金計画やエリアの提案も行います。