長く続いた超低金利の環境が変わり始めています。金利が本格的に上昇したときに、大きな影響を受けやすいのが変動金利型の住宅ローンを組んでいる世帯と言われます。多くの場合、金利上昇が発生しても当面は毎月の返済額が上がらず、後から負担が増えるといった制度が連動していますので、あまり深刻にならずに考えている方も多いものです。そこで、今回は金利上昇時の住宅ローンの「5年ルール」「125%ルール」について解説をしたいと思います。
■歴史的な低水準が続いていた住宅ローンの金利は終焉を迎えるのか?!
変動型住宅ローンの金利は足元で歴史的な低水準が続いていました。2024年1月の新規貸し出し向けの最優遇金利はメガバンクで年0.3%台から0.4%台、ネット銀行では様々な割引で年0.1%台になるケースもあったようです。2024年8月はメガバンクで年0.3%台から0.7%台、ネット銀行で年0.3%台となっています。住宅金融支援機構の直近の調査では、住宅ローン利用者のうち7割超が変動型を選択しているというデータがあります。
変動型は通常、半年ごとに設定した基準日に、金融機関が適用金利を見直す。基準日は4月1日と10月1日などで、2〜3カ月後の返済分から新しい利率を適用するのが一般的となります。シンプルな変動型の住宅ローン商品は、金利を見直すたびにローン残高などを基に毎月の返済額が変わります。元々、メガバンクや地方銀行などで借りると、金融機関が金利を上げても毎月の返済額はすぐに増えないことが多くあります。
■住宅ローンの「5年ルール」、「125%ルール」について
元金と利息の合計額が毎月一定になるようにする「元利均等返済」では、毎月返済額を原則5年ごとに見直す「5年ルール」を設定する為、メガバンクや地方銀行で借入をしている場合、返済額が大きく変わることがありません。見直しまでの5年間は、途中で金利が変わっても毎月の返済額は一定にするといった内容となります。見直し時に新たな利率とローン残高、残期間で再計算し、返済額を変更します。さらに毎月返済額を増やす場合にはそれまでの25%増を上限とする「125%ルール」もあり、ルールは1983年の大蔵省(現財務省)通達を踏まえて広まったとされています。通達は廃止となりましたが金利上昇が家計に与える影響をなるべく抑える目的で継続しているようです。
ルールがあれば毎月返済額の変動が抑えられ、急ピッチな金利上昇で返済ができなくなる事態を避けやすいものです。しかし、金利上昇時には元金が減りにくくなるデメリットもある為、金利が上昇すると、毎月返済額は一定でも、返済額に占める利払いの割合が高まる仕組みとなります。金利負担が大きければ、元金は減りにくくなります。
■金利上昇時の住宅ローンの返済を考えてみると・・・
4000万円を35年返済で借りる場合でシミュレーションしてみると、当初の金利を年0.4%とすると、最初の見直しまでの5年間の毎月返済額は約10.2万円となります。1回目の返済では約8.9万円が元金、約1.3万円が利払い(金融機関の儲け)に充てられます。仮に半年ごとに適用金利が0.5%ずつ4回上がり、金利が2.4%で高止まりしたとすると、2.4%に達した時点で返済額10.2万円のうち7.7万円が利払いに充てられ、元金の返済には2.5万円しか回らないといった結果となります。
5年ごとの毎月返済額の見直し時に金利が2.4%のままなら、5年後の毎月返済額は本来14.6万円となりますが、125%ルールがあると12.8万円までしか増やせません。反映されなかった分は次の5年後の見直し時に、返済額の上積み要因となります。2つのルールで元金の返済が遅れる結果、同条件でもルールがない場合に比べ100万円以上利払いが増える計算になるようです。
理屈の上では金利が急ピッチで上がり続けると、返済期間内に元金や利息の返済が終わらなくなる要素がありますが、このような状態は非現実的であると専門家は考えているようです。勿論、変動型のローンで金利上昇時に利払いを増やしたくないなら繰り上げ返済が選択肢になります。元金が減るペースが落ちる分を相殺できるためです。いずれにせよ住宅ローンを組まれる際には「5年ルール」「125%ルール」というものが存在している事をお忘れなく。
今後の参考にお役立てください。
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