国土交通省は老朽マンションの建て替えを促すため、敷地売却のルールを緩和する方針との発表が2019年の夏にありました。現在は耐震性不足が認定された場合のみ所有者の8割以上の賛成で売却可能と決めていますが、外壁や配管などが劣化した危険な物件も同条件で対象に加えるようです。こうした物件を放置して住民や周辺に被害が及ばないように、管理組合で自主的に再生しやすくなるかもしれません。現在、2020年に入り、不動産売買・賃貸の繁忙期に入っています。そのような状況で不動産購入を検討されている方はぜひ、把握をしておいて欲しいと思います。
■老朽マンションの建て替えを促すため、『敷地売却制度』は本当に実現するのか?!
『敷地売却制度』は、敷地を不動産会社などに売却し、住民はその代金を元手に建て替えられたマンションに再入居したり、別の住居に引っ越したりする仕組みの事ではありますが、なかなか多くの住民の同意が得られずといった事が今までの悩みではありました。
その為、国土交通省は適用できる建物の対象を広げ、耐震性に問題がなくても骨組みや外壁、配管といった設備の劣化、マンション管理の不備などを加味して判断ができるようにするようです。具体的な基準は今後詰めていくようですが、建て替えに反対する所有者の存在も想定し、建物の危険性などについて客観性のある基準にすることを検討しているようです。
国土交通省は適用対象の拡大によって、1981年6月以降に建てられた、いわゆる新耐震基準の建物の老朽化に対応させたい考えだ。新耐震基準でも築40年超となる建物は2022年末に約25万戸、37年末には約250万戸になると推計されています。
※個人的には東日本大震災が発生した際に、1981年5月以前のいわゆる旧耐震マンションの被害状況を考慮すると、なるべく早く旧耐震マンションの対策が進む事を期待しています。
■マンション所有者向け調査で分かった、住民の方の建て替えに対する想い?!
国土交通省のマンション所有者向け調査では、1970~74年に完成した建物では2割の人が建て替えが必要との回答結果が出たようです。1975~79年でも1割超に及ぶ。古い建物でも基本的には修繕や改修で対応したいと考える所有者が多いようですが、築年数が上がるほど建て替えを必要と考える人が増える傾向にあるとの事でした。
老朽化へのマンション側の備えを把握するため、地方自治体がマンションの管理状況を把握するための制度もつくる予定のようです。2020年4月には東京都内で自治体で導入が進む届け出制度というものがスタートするようです。その制度では、1983年末以前に新築された建物を対象に管理組合の運営体制や修繕積立金の額といった項目の報告を求めます。
届け出によって備えが不十分な懸念のあるマンションを事前に把握できるほか、届け出すら無い場合はより危険度が高いと判断する材料にもなりますので、これから不動産購入をされる際には、この届出の有無をチェックするようなシーンが考えられます。
■2014年に成立した改正マンション建て替え円滑化法とは
改正マンション建て替え円滑化法が2014年に成立したが、所有者の意見集約は難しく、建て替えは十分進んでいません。2018年4月時点で累計2万戸に届かない水準にとどまっているようです。管理組合は大規模建物の増加や居住者の高齢化を背景に合意形成の負担が重くなりつつあり、なかなか円滑化法の推進にはつながっていないようです。
マンションは2017年末の時点で644万戸あり、国民の8人に1人にあたる約1500万人が住んでいるとされています。築40年超の建物は20年後に約5倍の約352万戸に増える見込みとなり、将来的にはゴースト化するようなマンションも出てくると予想されています。
そのような状況も知っていただき、今後の不動産購入の参考にしていただければ幸いです。
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